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著者に聞く!

『「キャリア教育力」が未来をひらく 高校選びの新指標』
著者・加星宙麿記者に聞く vol.2

子どもたちが自らの手で未来をひらく キャリア教育から始まる新たな高校選び

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―本書を読んで、キャリア教育には、地域や企業の存在も重要だということがわかりました。取材を通じ、学校と地域や企業とのかかわりについて、今後の展望や課題など何か感じられたことはありましたか。

 学校と企業などがより気軽に連携していく環境をいかに整えていくかは今後の課題だと思います。各地域の教育委員会や経済団体など橋渡し役の力が重要になってきますし、各校がどれだけ周りに声を掛けられるか、意欲が問われます。
 また、授業内容にも工夫が必要で、ただやればいいというわけではありません。生徒に何を伝え、その体験をどう役立たせていくのか、参加者がすり合わせて共通認識を持ち、より意味のある連携関係を構築していく必要があります。

 

―本書では、「生きる力」を育てるキャリア教育としてさまざまな高校の取り組みを紹介しています。加星記者が取材をされてから、現在まで、キャリア教育はどのように変化していますか。教育現場で重視され、さらに広まりつつあるのでしょうか。

 近年、キャリア教育は教育現場で重視される傾向にあり、結果も出始めています。
 大阪府教育委員会では、高校生の就職内定率上昇などを目指して、昨年度から実践的キャリア教育・職業教育支援事業を展開しています。推進校計72校の就職内定率の平均は、府内全体の平均を上回っていました。
 これは就職を目指す高校生だけの問題ではありません。高校でこうした教育を受けていれば、大学などに進学した子どもにとっても就職を考えるときに大いに役立ちます。今はまだキャリア教育を重視する教諭の姿勢に温度差はありますが、就労の問題など若者をめぐる社会環境が厳しくなる昨今、その重要性は今後ますます高まるものと思われます。

 

―キャリア教育を受けているか受けていないかで、今後さらに差が生まれるかもしれませんね。キャリア教育を実施していない学校の子どもたちに、アドバイスやメッセージをお願いします。

 もし、まったくキャリア教育を導入していない学校があったとしても、将来必要な力をはぐくむ手法はあります。たとえばクラブ活動が一つです。競技形式のものならできる限りいい成績を残すため、先生や先輩に教えてもらったり、自分で考えたりして努力してみてください。文化祭や体育祭などの行事で企画・運営側に回るのも力を付けるのに役立つでしょう。
 目的を設定して確実に行動する力は、社会に出て働き続ける際、非常に役立つという調査結果があります。
 また、いろんな体験をしに学校の外に出掛けてみてください。行政やNPO法人などが企画するイベントでもいいですし、旅行などもいいでしょう。学校の外に広がる広大な社会を感じ、いろいろなものに関心を持ってください。ちょっとしたことが将来につながる可能性は十分にあります。

 

―何かに挑戦したり、体験したりするだけでも大きな違いがありそうですね。
本書の取材を通して、加星記者がキャリア教育における今後の課題だと思われることやキャリア教育のこれからに望むことなどありましたら聞かせてください。

 今後の課題は、今の社会環境の中で若者が社会に出たとき「生まれて良かった」と感じられるような教育がどれだけ展開できるかだと思います。生きるための基礎的な力をはじめ、基礎学力も不可欠です。自分の将来を考え、実現していく力を身に付けさせ、たとえ学力が低くても社会で認められる能力を伸ばしていかなければなりません。
 ただ、それを学校だけに任せるのは酷です。先生方はいまの業務だけでも手一杯の状態で、次々と新しい仕事が増えれば、生徒と向き合う時間が減ってしまいかねません。

 

―確かに学校だけでは限界があると思います。

 もし生徒にさまざまな職業を紹介したいなら、保護者に自身の仕事について話してもらうだけでも立派な職業教育です。保護者が横のつながりを生かして生徒たちに職場体験の場所を紹介することも可能ではないでしょうか。企業などに所属する人の多くは保護者です。
 人と人とのつながりの希薄化が叫ばれて久しいですが、キャリア教育がそうしたつながりの結び直しに大きく貢献していくことを願っています。次世代を担う若者の成長に寄与するだけでなく、子どもためと思ってやっていることが、子どもと大人、大人同士のつながりを生み出し、社会全体に明るさをもたらすとしたら、こんなにすばらしいことはないのではないでしょうか。

 

―キャリア教育は、一人ひとりの未来だけではなく、社会全体の、みんなの未来を担っているんですね。
 最後に初めて『「キャリア教育力」が未来をひらく 高校選びの新指標』を手にしようかという読者の方々に一言お願いいたします。

 本書では、ずば抜けて偏差値の高い高校はあえて避けました。たとえ抜きんでた学力はなくても教育の方法によって子どもは輝けるし、社会に出るための準備はできるということをお伝えしたかったためです。その教育方法の目安として集めたのが本書の内容です。仮に偏差値の高い学校で同様の取り組みをしていれば、それはそれで頼もしい限りです。子どもがよりよい未来をつかみ取るため、高校選びの指標として役立てていただければ幸いです。

 

―子どもにとって幸せなことは、早くから将来の夢・目標を明確に描くことができ、そのためにどう努力すべきかを学べることなのだと改めて感じました。
 できるだけ多くの皆さんに本書を読んでいただけたら。特に、進路を考えようとしている子どもたちや保護者の皆さん、キャリア教育に取り組んでいる先生方は、本書を通して、子どもたちといろいろ話し合ってもらえるといいですね。
 加星記者、本日はどうもありがとうございました。

 

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プロフィール

加星宙麿(かぼし・おきまろ)

1976年大阪府生まれ。大阪市立大学大学院修了。2003年から大阪日日新聞記者。大阪市政担当などを経て現在、大阪府政、大阪府教育委員会を担当。連載企画に「違いを力に 発達障害をめぐる現場から」「いちゃもんつけんと話ししよ 追い詰められる学校」「ケータイと向き合う!ネット社会に生きる子供たちのために」「反貧困―連帯する大阪の現場から」「大阪ダルクの挑戦 薬物依存回復への道」「報告から20年 エイズは"いま"」など。

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