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広尾 晃の気まぐれ寺ばなし

第3回 鎌倉のお寺

鎌倉は東京から1時間足らず。首都圏の手ごろな観光地です。
源頼朝が鎌倉幕府を開いたことで知られるこの町には230ものお寺があります。
鎌倉は海に面した南方を除く三方を山で囲まれています。アップダウンの多い土地ですが、見どころの多い面白い町です。
鎌倉駅で電動自転車を借りれば、比較的楽にお寺回りができます。
私が自転車で鎌倉のお寺を始めて回ったのは、15年も前の話です。
すぐあとに自転車を借りたおじさんが電動自転車の使い方を知らなかったようで「これ、どうやんの」と聞いてきました。顔をみるとなんと蜷川幸雄さんでした。怖い演出家だと聞いていましたが、柔和な笑顔が印象的でした。

 

鎌倉のお寺の特色は「同時代のお寺が密集して存在している」ことにあります。鎌倉は平安末期に歴史の舞台に躍り出て、室町時代の中期には埋没します。300年足らずの間「武士の都」でした。
鎌倉のお寺は大部分がその時期の創建です。
源頼朝、頼家、実朝、長命で有名だった三浦大介、新田義貞、そして何より北条時政から北条高塒までの北条氏一門。多くのお寺の瓦には「三つ鱗」の紋が刻まれていますが、これは北条氏の紋です。
お寺を巡りながら北条氏の栄枯盛衰の物語を実感することができます。

 

この地方でしかみられないものに「やぐら」があります。これは崖に横穴を掘ってそこにしつらえたお墓です。土地が狭く、斜面が多いこの土地に発達したお寺の形です。
多くの鎌倉時代の武将の墓は「やぐら」になっています。
寿福寺の北条政子、源実朝母子のやぐら、鎌倉幕府の滅亡時に、北条孝時一族が自刃したと言われる葛西ケ谷東勝寺のやぐらなど、他のお墓とは違う趣深いものです。
また昭和の俳人、高浜虚子のお墓も寿福寺のやぐらになっています。

 

室町時代、鎌倉には京都と並ぶ「五山制度」が敷かれました。円覚寺、建長寺など大きな禅刹が今も甍を並べています。また長谷寺、鎌倉大仏高徳院など、有名なお寺もたくさんあります。
これももちろん見ものですが、住宅地の中にひっそりたたずむお寺が北条氏や鎌倉幕府にまつわる伝承を持っていたりもするのです。
鎌倉は「ふつうのお寺」の宝庫でもあるのです。ぜひ、おでかけを。

 

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 北条政子の墓(寿福寺)

 

プロフィール

広尾 晃(ひろお・こう)

1959年大阪市生まれ。立命館大学卒業。コピーライター、プランナー、ライターとして活躍中。日米の野球記録を専門に取りあげるブログサイト「野球の記録で話したい」でライブドア奨学金受賞。スポーツ専門テレビ局「J SPORTS」でプロ野球番組のコメンテーターも務めている。著書に『巨人軍の巨人 馬場正平』、『プロ野球なんでもランキング』、『プロ野球解説者を解説する』(以上、イースト・プレス刊)など。

 

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