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著者に聞く!

「国連英検公式ガイドブック」
監修者・服部孝彦先生に聞く

「国連英検にチャレンジすることによって幅広い
視野とワンランク上の英語力を身につけてほしい」

『国連英検公式ガイドブック』監修者でいらっしゃる服部孝彦先生に聞きました。
(text by (C)西優子)

 

—-まず、国連英検の概要についてご説明いただけますか。

 

服部/国連英検は、単に英語力だけでなく、グローバルプレーヤーとして国際舞台で活躍するために必要な総合的英語コミュニケーション能力を測定する検定試験で、E級から特A級まで6ランクの試験を設けています。

 

 E、D、C級は、文部科学省の学習指導要領を踏まえた内容となっており、E級は中学校終了程度、D級は高校基礎程度、C級は高校修了程度の英語力が問われます。
またC級は高校卒業程度認定試験において、英語資格として認定されています。

 

 B級、A級、特A級は、『わかりやすい国連の活動と世界/Today’s Guide to the United Nations』が受験指定テキストとなっていて、各級が指定した範囲から出題されます。つまり、国連組織や政治や経済、軍事、医療などの国際事情に関わる問題に答えていただくことになるわけですね。

 

 また特A級は、外務省国際機関人事センターが実施するアソシエート・エキスパートなど、派遣候補者選考試験の英語語学力審査の対象になっていますし、成績上位者には外務大臣賞が贈られることになっています。
特A級は英語検定の最高峰だといっていいでしょう。

 

 

—-他の英語検定、たとえば実用英語検定試験やTOEICなどとは、どういったところが違うのでしょうか。

 

服部/国際協力、国際理解に基づく、英語コミュニケーション能力の育成を目的としているのはもちろんですが、国連英検の最大の特色は、最新の言語学の研究成果を踏まえた内容になっている点です。
“コミュニケーション能力”という言葉は、一般的にはその定義があいまいなまま使われていますが、実は言語学的にユニバーサルな理論がきちんとあるんですね。

 

 カナルという言語学者によると、コミュニケーション能力は、
(1)文法的能力(grammatical competence)
(2)社会言語学的能力(sociolinguistic competence)、
(3)ディスコース能力(discourse competence)、
(4)方略的能力(strategic competence)という4つの構成要素に分けられます。
この4つの能力を問うというのが、国連英検の基本的なコンセプトなのです。

 

 ただし、E、D、C級については学習指導要領に準拠していることから、ペーパーテストによる文法的能力のチェックが目的となっています。
B級もペーパーテストだけなのですが、リスニング問題と作文の中で社会言語学的能力とディスコース能力を測ることになっています。
A、特A級の場合は、ペーパーテストと面接試験を通して、4つの能力を試しています。

 

—-社会言語学的能力、ディスコース能力、方略的能力というのは耳慣れない言葉ですが、具体的にはどういった能力なのでしょう?

 

服部/「文法的に正しくてもその言い方はちょっと…」と思われるような表現もありますよね。
たとえば、意見交換の場で相手の主張に同意できなかったとします。
その時、いきなり”I can’t agree with you.”と、直接的に否定したら相手は傷つくし、前向きに意見を交わせる雰囲気が失われかねません。
では”I understand what you mean,however,〜”と、まず相手の立場を受け入れてから反論すればどうでしょうか。
まったく印象は違ってきますよね。
このように、話している相手や場にふさわしい英語で表現する能力を社会言語学的能力といいます。

 

 ディスコース能力というのは、話の内容に一貫性や結束性をもたせて全体を構成する能力のこと。
1つのパラグラフには1つの主題があり、パラグラフは主題文で始まって、その主題をサポートする支持文が続く。
そして多くの場合は最後に結束文がくるというルールがありますが、それができるかどうか。平たく言うと論理的に考えられる能力のことですね。

 また方略的能力というのは、たとえば言葉でうまく表現できない場合にゼスチャーを使ったり、ある単語が思い浮かばなかったときに、別の言い方でそれを補ったりする能力のことをいいます。

 

—-確かに日本の英語教育では、文法的能力の育成にはとても力を入れていますが、それ以外の部分にはあまり目が向けられてないような気がします。

 

服部/私は海外での仕事の機会も多いのですが、そこで痛感するのは、日本人がいかに海外で誤解されているかなのです。

 

 海外では、ある程度文法能力があると、それと同レベルの社会的言語能力やディスコース能力を備えていると判断されるのですが、日本人は文法的能力以外の能力が非常に弱い。
成績優秀な留学生が教授に対して、英語特有の言い方を無視したぶしつけなものの言い方をしたり、ビジネス上の依頼をする際に、文法的には正しくても英語コミュニケーションという観点からは不適切な表現を使ったり…。
それではまとまる話もまとまりません。文法的表現以外の教育を受けていないのが現実なんですね。

 

 実は昨年から、良識ある大人の英語コミュニケーション能力を身につけたい方を対象に、「国連英検ベーシック・トライアル」という検定をスタートさせたのですが、中学校の英語教師の方々にもぜひ受けてほしいと思っているのです。
それは、この試験は文法的には高校初級レベルですが、社会言語学的能力やディスコース能力の基本をテストする内容になっているからです。
きっと教育指導の現場で役立つと思うんですよ。

—-ところで、A級、特A級で実施される面接試験では、大使経験者をはじめ錚々たる方々が面接官を務めているそうですね。

 

服部/ええ、そうなんです。インタビュアーとしてのトレーニングを積んだネイティブスピーカー、英語を駆使して各国と渡り合った外務省大使経験者、国連英検特A級合格、TOEIC満点など複数の公的資格をもって国際的に活躍している大学教授などに、面接官をお願いしています。

 

 というのは、国連英検の面接官は、単に英語ができるかどうかではなく、たとえばソマリアの問題だったら、国連が何をできるのか、それに対して日本はどんな援助をすべきなのか、といったことを、理路整然と答えられるかどうかを見なければいけないわけですからね。

 

 また、受験生はたいへんな努力をしてこの試験に臨んでいます。
その受験生の真剣な気持ちを理解できる面接官でないと、受験生に失礼だという思いもあって、面接官の人選には非常に力を入れているんですよ。

 

—-服部先生監修の『国連英検公式ガイドブック特A・A級』『国連英検公式ガイドブックB・C級』を、受験生の方々にどのように活用してほしいとお考えですか。

 

服部/国連英検の受験対策用としての利用は当然ですが、ただ試験という狭い目的だけでなく、自分の視野を広げるためのツールとして活用していただきたいですね。
なぜなら、公式ガイドブックで取り上げているのは、かなり高度な英文であり、国際事情についても深く紹介しているからです。
といっても、先端技術論文や古典のような特殊なものではなく、普段日本のTVニュースや新聞で見聞きするような国際事情がテーマですので、難しすぎるということはないと思います。

 

 また、論理的な文章をチョイスしていますので、”こういう書き方をすれば相手に伝わりやすい文章になるんだな”ということを学ぶ材料にもなります。

 

 もちろん、みなさん合格を目標に勉強なさるわけですが、受験のためにいろんな勉強、準備をすることそのものが、その後の人生を豊かにするための糧になると思います。
ぜひこの公式ガイドブックを、よいきっかけにしていただきたいですね。

プロフィール

服部孝彦(はっとり・たかひこ)

初等・中等・高等教育を日米両国で受けた帰国子女。言語学博士(PH.D.)。
米国ケンタッキー州立ミュレー大学大学院(MSU)客員教授等を経て、現在、大妻女子大学・同大学大学院教授、早稲田大学講師。国連英検統括監修官兼特A級面接官、日本実用英検1級面接委員、海外子女教育振興財団外国語保持教室アドバイザー、イーオン語学教育研究所顧問、元NHK英語教育番組講師。
主な著書に文部科学省検定中学英語教科書『ニューホライズン』(共著、東京書籍)他、著書80冊、学術誌発表論文90編、学会発表論文100編を超える。
現在でも日米間を1年に何往復もしながら、日米両国の国際学会等での研究発表および講演活動を精力的にこなす。

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