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著者に聞く!

『親子で学ぶ 自然災害から子どもの生命を守る本』 著者・山本光義先生にききました。

親の「自然に親しむ姿勢」こそが 子どもの防災への意識を高めます

 

―― 『親子で学ぶ 自然災害から子どもの生命を守る本』について、まずは著者の山本先生からどのような本なのか、教えていただけますか。

 

この本は頻繁に起こる自然災害から子どもの命を守るためにどうすればいいかをまとめたものです。お父さんやお母さん方が、子どもたちと一緒に自然に親しみながら、天気のはなし、地震・火山のはなしなどを通して、自然災害からどうやって身を守ればいいかを子どもたちに教える方法を示したものです。

子どもを持つ親御さんを対象にしていますが、学校の先生方や一般の方々であっても興味深く読んでいただけると思います。学校の先生方から授業に役立つという声もいただいているところです。

 

 

――この本を書こうと思われたきっかけを、教えてください。

 

日本列島は環太平洋造山帯に属していて地震や火山の多い国です。1995年1月に発生した兵庫県南部地震や2011年3月に発生した東北地方太平洋沖地震による津波によって多くの人々が犠牲になりました。2014年の9月には御嶽山が突然噴火して多くの方が亡くなりました。大雨による土砂災害や浸水害による犠牲者も後を絶ちません。こうした自然災害に子どもが巻き込まれることも多いのが現状です。

何とかして自然災害から子どもたちを守りたい。そんな思いが本書を書く直接の動機となっています。

 

 

――山本先生は、中学校の理科教諭でいらしたのですよね。現役の頃はどんな先生でいらっしゃいましたか? 

 

自分で、どんな教師であったかを語ることは難しいのですが、いくつかエピソードを紹介します。教師になった頃、男子バスケットボールの顧問をしてほしいと言われ、引き受けたまでは良かったのですが、実はこの時、バスケットボールは何人でする競技なのかさえ知らなかったのです。到底これでは指導はできません。最初の頃は子どもたちと一緒に汗を流し練習する毎日でした。手の甲を下にしてボールを下から支えながらするレイアップシュートが、どうもかっこ良く思えて、子どもたちの真似をしていると、子どもたち曰く「先生、最初からそんなシュートしていると上手くならないよ」。これはもう勉強するしかないと思い、バスケット関連の本を買い込んできてはルールや指導法を勉強しました。近くの高校へ子どもたちを連れて行ってバスケットの専門の先生に教えてもらったりしたこともあります。

別の学校で女子バレーボールの顧問になったときは、夏休みに一日練習をするために、午前中の一定の時間は部員を集めて自主的な勉強もさせました。とにかく家庭を顧みずにスポーツの指導に打ち込んでいたように思います。

科学クラブを担当していた時のことです。子どもたちにいろいろな実験や観察をさせたいとなると、中にはかなり高価な薬品を準備しなければならないことがあります。少ない学校予算の中で何とかその薬品を買ってもらうために、職員室の事務職員の前で実演して見せて、これを子どもたちに実験させたいからといって泣きついたことも一度や二度ではなかったように思います。最後は事務職員もあきれ顔でしたが。

 

 

――いまのエピソードをお聞きして、山本先生の真面目で誠実なお人柄を感じました。他にも、生徒さんたちとの思い出はございますか? 

 

卒業式が終わった後、全員で卒業生を校門まで見送るのですが、私はこれが大変苦手でした。クラスの子どもを目の前にすると泣いてしまうからです。

そんな教え子が昨年、数十年ぶりに同窓会をするということで案内をいただきました。せっかくの機会だと思って出席させていただきました。名前はいつまでたっても忘れないものですが、数十年もたてば名前と顔が一致しなくなります。当然、道で出会ってもこちらからはまず気づきません。しかし一旦顔を合わすと十分もたたないうちに、みるみる数十年前の姿が目の前に浮かび上がってくるから不思議です。卒業生がこうして声をかけてくれることは、教師にとって何よりもうれしいものです。

今から数十年前のことです。科学クラブでの出来事です。その日は子どもたちがカエルの解剖をしたいからといって近くの田んぼにカエルを捕まえに行きました。戻ってきた子どもが「カエルがいなかったので、これを解剖したい」といって、机の上にどんと載せたのは大きなヘビでした。さすがにこれは解剖できませんでした。

現在はしていませんが、当時は理科の授業でもカエルの解剖実験がありました。授業の前日にカエルを捕まえて持ってくるように連絡してあったので、当日、何人かの子どもがカエルを持ってきていました。理科の授業の直前になって、カエルを持参した子どもたちが慌てて私のところへ走ってきて、蓋をしてあった瓶の中のカエルがいなくなったと訴えるのです。大騒ぎになったのですが、教室のどこを探してもカエルは見当たりませんでした。見当たらないはずです。カエルがかわいそうだと別の子どもが逃がしてしまったのです。ちょうど、全国的にカエルの解剖が生命の尊重の観点から問題になっていた矢先だったのです。

 

 

――なるほど、今はカエルの解剖はないのですね。学校での思い出は尽きないことと思います。

ところで、今回の本はお天気や災害がテーマですが、山本先生が、お天気に興味を持たれたきっかけ、また理科の先生になろうと思われたきっかけを教えてください。

 

私は、山村で生まれ育ちました。子どもの頃から野山を走り回る元気な少年でした。春はゼンマイやワラビ採りに山へ出かけ、夏になれば青梅やイタドリをかじり、魚取り、虫取り、植物採集に熱中していました。家の軒に巣をつくる鬼蜘蛛家の軒に巣をつくる鬼蜘蛛(おにぐも)や女郎蜘蛛(じょろうぐも)の観察もしました。秋は柿、栗、ザクロ、アケビなどを食べ、自然薯(じねんじょ)掘りにも出かけました。冬、雪が降れば氷柱(つらら)をしゃぶり、手作りのそりで遊んでいました。わなをしかけて鳥を捕まえたりもしました。そんな中、祖父がする天気予報にも興味がありました。祖父は毎日、家の近くにある竹藪を見て天気を予想していました。竹の揺れ具合から風の向きを判断して天気を予報するいわゆる観天望気という方法です。

こんなふうに、小さいころから自然に囲まれて育ったことが理科教師を目指す土壌になっていたのかもしれません。

しかし、決して理科が好きだったわけではありません。社会や国語の方がよほど好きでした。学生時代には子どもを対象にしたサークル活動に没頭しました。養護施設や僻地の子どもたち、地元の子どもたちにゲームや劇、人形劇を届けました。こうした学生時代の経験が教師を志すきっかけになったのだと思います。

 

 

――決して理科が好きだったわけではない、というところが意外でした。子どもたちとのふれあいがお好きで教師になられた面があるわけですね。

現在は、執筆や講演活動のほか、時間のあるときは何をして過ごされていますか?

 

私が住んでいるところは、まだまだ緑がたくさん残っていて家の裏手には田園地帯が広がっています。時間があれば息子夫婦が買ってくれたジョギングスーツで、この田園地帯の農道をジョギングするのを楽しみにしています。健康維持が目的ですが、それだけでもないのです。走っている時のほうが集中できるので、考える時間としてもジョギングを利用しています。気が付けば家に戻っていたということもしばしばです。

 

 

――夏が近づいてきて、台風や大雨などが心配な季節になってきました。本書の使い方で、ご提案がございましたらお聞かせください。

 

台風や大雨による土砂災害による犠牲者が、近年増える傾向にあります。こうした災害を防ぐには、まず第一に、自然災害に対する意識を改めなければなりません。もうじき雨も止むだろうといった楽観論から、土砂災害が発生するかもしれないという危機感を持つ意識への転換が必要です。第二に、テレビなどを通じて出される土砂災害警戒情報や特別警報、警報、注意報などの気象情報を正しく理解することが大切です。第三にはは視覚、聴覚、臭覚を働かせて、災害の発生する兆候をいち早く察知することが必要になります。

本書をこうした視点で読んでいただくことが、あなたのお子様を災害から守ることにつながります。随所に親子の対話のイラストも配していますので、親子の対話の材料としても利用していただけるものと思われます。 

 

――東日本大震災後、その余震だけでなく、各地で地震が増えています。地震に対しては、どのような心構えでいることが大切でしょうか?

 

日本列島には多くの活断層があり、どこでも地震が発生する可能性があります。ですから、いつ地震が発生してもおかしくないのです。しかしいつどこで地震が発生するか予測することはできません。まず、私たちはそのことを踏まえて地震への備えをしなければならないでしょう。

地震被害を最小限にするための準備として、家具の固定、避難に備えての緊急時の持ち出し品の準備、避難場所の確認は欠かせません。地震が発生して震度5弱以上の強い揺れが予想されるとき、緊急地震速報が報知音とともにテレビ、ラジオ、携帯を通じて流されます。この緊急地震速報をどこで聞くかによってとるべき行動が変わってきます。場所ごとに、そのときどのように行動するか、あらかじめシミュレーションしておくことも必要でしょう。備えあれば憂いなしです。

 

 

――昨年の御嶽山の噴火にはほんとうにびっくりしました。これから夏山のシーズンですが、登山やレジャーに出かけられる方に、アドバイスがありましたら、お願いします。

 

山の頂上から眺める自然の光景には誰もが感動を覚えるものです。しかし、その雄大な自然だからこそ、危険がいっぱいであることを忘れてはなりません。誰もが手軽に登山を楽しむことができるようになり、近所の観光地にでも出かけるような感覚で、比較的軽装で登山に出かけることが多いのではないでしょうか。

でも、手軽に行けても危険な場所に足を踏み入れているということを忘れてはなりません。山の天気は変わりやすく、ふもとでは晴れていても山では急激に天気が悪化して気温が低下することがあります。また、落雷も発生しやすいのです。そんなときは、まあ大丈夫だろうとは思わないで、すぐに引き返す勇気が、自分だけでなく子どもの命を救うことにつながります。

 

 

――山本先生の今後のご活動について、よろしければお聞かせください。

 

天気予報の大きな目的は災害を予防することです。仮に専門家のように予報ができなくても、テレビで放送されている天気予報を正しく理解して、自分で判断できるなら、気象災害から身を守ることができるのです。

そんな思いから、私は一般の人々、とりわけ教師や子どもを持つ親を対象に、天気予報や防災についてできるだけ分かりやすく伝えようと取り組んできました。このことが結果的に、子どもたちを自然災害から守ることにつながると思うからです。これからも天気予報や防災について広く伝えていきたいと考えています。

 

 

――最後に、これから『親子で学ぶ 自然災害から子どもの生命を守る本』を手にしようかという読者の方々に、ひとことお願いいたします。

 

親の自然に親しむ姿勢こそが、子どもの防災への意識を高めます。

 

 

ご協力どうもありがとうございました。

 

 

プロフィール

山本光義(やまもと・みつよし)

1949年三重県生まれ。1973年関西大学工学部卒業。民間会社を経て、1977年より三重県公立中学校理科教諭。2006年気象予報士の資格を取得。日本気象予報士会会員。2010年名張市立北中学校理科指導教員。
現在、執筆活動や講演活動など天気の学習指導や天気予報の普及に力を注ぐとともに、中学生の学習支援も行っている。
主な著書に、『あなたもできる100問解いて天気予報』『空を見上げたくなる本』(ともに技報堂出版)、『理科の授業で伝えたい天気のはなし』(日本評論社)、『これでわかる天気予報の科学―予測の基礎と10のポイント』(合同出版)がある。

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