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著者に聞く!

『うさぎの国へ スコットランドのアナウサギ』
著者・村川荘兵衛さんに聞きました

自然の中を生き抜くちいさな命
のらうさぎの日常に魅せられて

うさぎは、学校や動物園にいて子供のころから身近な動物のように感じますが、意外と野生の姿を知りません。この写真集『うさぎの国へ スコットランドのアナウサギ』では、自然の中で、のびのびと自由に生きているうさぎの姿を垣間見られる一冊になっていますね

 

うさぎって「ちっちゃい。かわいい。でもほんとうは、たくましい」。帯にある通りなんですよ。スコットランドで小さくもたくましく生きている、のらうさぎ(学名:アナウサギ)の日常に触れた写真集です。


どの写真のうさぎも本当にかわいいですね。村川さんがスコットランドのアナウサギに魅かれた理由を教えてください。

 

 当たり前に生きようとするたくましさです。
 1996年、僕は勤めていた写真館を辞め、スコッチウイスキーの蒸溜所巡りを口実に、初渡英しました。その道中に立ち寄ったブリテン島最北端のダネットヘッドという岬の駐車場脇で、偶然、のらうさぎを見かけました。「あ、珍しい」くらいのつもりで写真を撮って......。それまでうさぎはおろか動植物に興味などまったくなかったんですけどね。
 帰国後、仕事もなく引きこもっていたころに、のらうさぎの写真を見返したんです。
「こいつらはかわいい外見とは裏腹に、dead or aliveな生き方をしている。動物界では人間(僕のことです)が一番情けないなぁ」と。「このうさぎたちのたくましさを撮らなければならない」と思ったのが最初です。


そんな出会いがあったんですね。


それから、うさぎについてあれこれ調べたんですよ。「イギリスではありふれた動物なのに、誰も詳しくは知らない」とか「希少価値がないので(笑)、継続して追っかけている写真家もいない」ということが分かりました。
ならば、動植物写真にありがちな決定的瞬間とは違う、一見平々凡々とした彼らの生活する空気間を、適当に見られればいいなと。
「かわいいうさぎ」が撮りたかったわけではなく、「スコットランドの旅の途中で出会った、友人たちのスナップ」を撮っているつもりです。
もし、あのとき、たぬきに出会っていたら、たぬきを撮り続けていたかもしれません(笑)。

 

うさぎの写真は、「友人たちのスナップ」なんですね。
撮影地のスコットランド中部アンガス州のクロヴァ渓谷にも愛着があるそうですが、その地に通われる理由は何かあるんですか。

 

彼らを撮ろうと決めて、最初の渡英時(1998年)スコットランド・パースシャーにあるスコットランドの自然観察研究機関で「ウサギのいるところを教えて」と尋ねたら、「everywhere」と(笑)。アナウサギはイギリス中にいるから珍しくもないんだそうです。
特に多いところをと教えてくれた場所の一つがクロヴァ渓谷だったんです。
あちこちで撮っていましたが、クロヴァ渓谷が撮りやすいからと通ううちに、その雄大さ、光の美しさ(天候がよく変わり、雨上り後の光が美しい)、また現地の友人も増えて、だんだん愛着がわいてきて......。「ここで撮り続けようと」と思うようになりました。

 

動物を相手に、撮影はどのようにして行われたのですか。

 

結構、気分次第なんです(笑)。
彼らの生活は見たい一方で、自分の好みの光があり、朝からしとしと雨が降っていると、もう行く気をなくすんですよ。ところが天気が変わりやすいのが、スコットランド。現場に行かないとわからない。だから、雨でもとりあえず現場に向かうようになりました。
撮影は主に午後から。夏場は日が長いので、夜9時くらいまで余裕で撮影できます。デジタルカメラになってからは高感度も使えるようになったので、さらに遅くまで。P.40の写真は夜10時半ごろです。薄明薄暮性の彼らの生活に合わせています。


長丁場ですね。撮影中は、地面に這いつくばって、ひたすら匍匐前進とありましたが、たいへんだったことは何ですか。

 

撮影時は基本うつぶせです。最初のころは、腰痛で宿のベッドから起き上がることができませんでした。だんだんとうさぎに逃げられない体の動かし方を覚え、山から1時間ほどの街に診療所を見つけてから、少し楽になりましたよ。
また仕方がないことですが、せっかくいい光で近づくことができたのに、超低空飛行のイギリス空軍機がジェット音を轟かせてやってきて、うさぎが一斉に穴に隠れたり、走り屋さんのヤンチャな車のエンジン音で一斉に隠れたり、山の中は騒音が多い(笑)。
自分の管轄外のことで撮れなくことがたいへんでした。

 

撮影中は、たいへんな思いをされながら撮影されているんですね。反対に、野生の動物たちを撮影する醍醐味、おもしろさは何でしょうか。

 

うさぎ目線で見る世界観ですね
うさぎを待っている間、うさぎ目線でぼーっと景色を見ています。あるとき、ミツバチがやってきて、せっせと蜜を集めていたのです(P.34)。それを見て、月並みながら「みんな、生きているんだなぁ」と。そして、のらうさぎも同じものを見ていたりもする。同じ目線で、名もなき花を見たり、そこへ羊がやってきたり......。
何かそれだけで、今まで動植物にこれっぽっちも興味がなかった僕でも、彼らの世界に入れてもらえたような気がして、とてもうれししいんです。

 

そんなうさぎの世界をファインダー越しに見ている村川さん。何度も撮影地に通われていて、仲良くなったうさぎや再会を果たしたウサギはいますか。

 

彼らは専門家でもその個体を識別するのは難しいそうで、僕自身も同じ巣穴に行っても同じ個体か同課の識別はつきませんね。ただ、毎日同じ巣穴に通い続けると、経路の微妙な違いと性格で、なんとなく個体差が分かりますよ。何かあったとき真っ先に逃げる3姉妹と、そのときそれでもこちらが気になって立ち止まっているピーターのようなうさぎとか、もっとも雌雄の区別はわかりませんが。
P.14の「肝っ玉母さん」(詳しくは僕のブログ「しょうへえショータイム」内「肝っ玉母さんの話」)は、左耳がちぎれていてわかりやすいです。普通、何かあれば子供より先に逃げる大人うさぎが、このうさぎに限っては逃げるどころか、僕の目の前で子にせがまれ、授乳する始末。雨が降っていても黙々と草を食べ続け、僕とのいい距離を保っていましたね。
次の年、同じ巣穴に行くと肝っ玉母さんがいた。ほかの大人うさぎと比べても相変わらず逃げないし、悠然とこちらを見ている感すらある。このときは、旧友に再会したよううれしかったですよ。

 

今もスコットランドを訪れ、撮影を続けられているとのことですが、今後の夢を聞かせてください。

 

もっと自由な発想で撮影し、もっと自由にうさぎとコンタクトをとれるようになりたい。そして、うさぎに興味がない人にも何かを感じてもらえる、「うさぎのいる風景」を撮ることが目標ですね。

 

最後に初めて『ウサギの国へ スコットランドのアナウサギ』を手にしようかという読者の方々に一言お願いします。

 

ぜひ、彼らの生き様に触れてみてください。

 

これからもかわいくて、たくましいうさぎの写真を撮り続けてください。
どうもありがとうございました。

プロフィール

村川荘兵衛(むらかわ・しょうへえ)

フォトグラファー。1968年滋賀県彦根市生まれ。

佛教大学社会学科卒業後、広告代理店写真部をへてフリーランス。

主に雑誌や広告の撮影を手がける。

1996年初渡英。ウイスキー蒸溜所巡りのドライブ旅行中に偶然ブリテン島最北端の岬で

野生のアナウサギに出会い、魅了される。

以降毎年のようにスコットランド中部・アンガス州のグレンクロヴァ渓谷を訪れ、

撮影を続けている。

ブログ「しょうへえショータイム

Facebook「Shohee Murakawa Photo Office

 

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